2022/03/07
はじめに
本ブログは、2022年3月から「週刊」で更新するようにしました。
前回更新したのが3月2日。
更新した次の日の2022年3月3日は、京都の岡崎公会堂で水平社創立集会が開かれて100年目の節目の日でした。
「週刊」にした途端に書きたいことが次々と頭に浮かぶ!…もしかしたら「ブログあるある」かも(^^)
もへちゃんが中学校の先生だった頃、「水平社創立・水平社宣言」についての人権学習にとりくんでました。
ブログ週刊化第2弾として、その人権学習について書いた学級通信を探したのですが…
見つけることができませんでしたm(_ _)m
そこで今回は、その人権学習の指導案や資料から抜粋しようと思います。
差別のない社会の実現を目指して「三月三日の風・水平社宣言」
主題設定の理由
本題材は、「水平社宣言」を創案した西光万吉の少年時代から全国水平社創立までの様子を描いたものである。
「解放令」が出され、制度は変わったが、世の中の人々の差別意識は根強く残り、結果的には形だけの解放でしかなかった。
日本初の人権宣言とうたわれた「水平社宣言」は、解放令以降の部落の人々の長い闘いの中から生まれ、差別をなくし人間平等の大切さを社会に訴え、自主的で組織的な部落解放運動の出発点となった重要な出来事であった。
水平社を創立していく運動の様子を学ぶことを通じて、西光万吉をはじめ、被差別部落の人々が、幾多の差別を受けながらも人間らしさを失わず、差別のない社会を目指して立ち上がったことに共感させる。
また、「水平社宣言」に込められた熱い思いを知ることで、差別をなくしていこうという気持ちを高めさせたい。
ねらい
- 西光万吉が受けた差別の現実を知り、仲間の支えの中で立ち上がっていった生き方の素晴らしさを感じ取る
- 水平社宣言に込められた熱い思いを読み取る
1時間目…啓発映画「三月三日の風 水平社誕生物語」視聴
現代の子どもたちは気づきませんが、主役の西光万吉役を演じているのはかつてジャニーズの中村繁之くんです(^^)
さらに、ひかる一平くん(やはりかつてジャニーズ)も出てます。
あらすじ
全国水平社創立社の一人,西光万吉は,本名を清原一隆といい,1895(明治28)年に奈良県柏原村西光寺で生まれました。
部落出身者として初めて県立中学校に進学しましたが,体操の教師や同級生からのいやがらせと差別に耐えきれず,退学しました。
そして京都の中学校に転校しましたが,ここでも同じでした。
絵を書くことが好きだった一隆は,父に励まされて東京で画家への道を歩みはじめますが東京でも差別は変わりませんでした。
学問の道も,画家の道も閉ざされた一隆は,体を病み,絶望して故郷に帰ってきました。
この一隆を常に励ましてくれたのが,終生の親友であり同志となった阪本清一朗でした。
柏原に帰った一隆は,村の青年たちと〈黒潮会〉をつくり友人たちと共に自ら立ち上がることの重要性を認識して準備にかかります。
〈黒潮会〉を発展的に解消して〈燕会〉を結成し,賀川豊彦の教えで部落の生活向上のために共同販売所を始めましたが,弾圧がきびしく困難をきわめます。
京都に出た一隆は,多くの仲間と知り合い,水平社の考えを広めていきます。
1922(大正11)年3月3日,京都市岡崎公会堂で全国水平社創立大会が開かれました。
この日から水平社運動は,全国に燎原の火のごとく広がっていったのです。
徳島県立総合大学校まなびーあ徳島 視聴覚教材情報より引用
2時間目「水平社宣言」学習プリント
宣 言
全国に散在するわが特殊部落民よ団結せよ。
長い間虐められて来た兄弟よ、過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々によってなされた我らのための運動が、何らのありがたい効果をもたらさなかった事実は、それらのすべてが吾々によって、また他の人々によってつねに人間を冒涜されていた罰であったのだ。
そしてこれらの人間をいたわるかのごとき運動は、かえって多くの兄弟を堕落させた事を想えば、①この際我らの中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集団運動を起せるは、むしろ必然である。
②兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇迎者であり、実行者であった。
陋劣なる階級政策の犠牲者であり、男らしき産業的殉教者であったのだ。
ケモノの皮はぐ報酬として、生々しき人間の皮をはぎ取られ、③ケモノの心臓を裂く代価として、暖かい人間の心臓を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪われの夜の悪夢のうちにも、なお誇りうる人間の血は、涸れずにあった。
そうだ、そして吾々は、この血を享けて人間が神にかわろうとする時代におうたのだ。
④犠牲者がその烙印を投げ返す時が来たのだ。
殉教者が、その荊冠を祝福される時が来たのだ。
吾々がエタである事を誇りうる時が来たのだ。
吾々は、かならず卑屈なる言葉と怯懦なる行為によって、祖先を辱しめ、人間を冒涜してはならぬ。
⑤そうして人の世の冷たさが、どんなに冷たいか、人間をいたわる事が何んであるかをよく知っている吾々は、心から人生の熱と光を願求禮讃するものである。
水平社は、かくして生れた。
⑥人の世に熱あれ、人間に光あれ。
大正十一年三月三日 全国水平社創立大会
問1
傍線部の中で、一番惹かれた番号とその理由。また、みんなに訴えたいこと。
問2
水平社宣言に込められている思いから、自分たちが生きていく上で大切だと思ったことは?
血湧き肉躍る人権学習
もへちゃんは2時間目の授業を、自ら「血湧き肉躍る授業」と名づけた手法で展開しました。
どう言うことかというと
授業の初めに学習プリントを配布し
今から「三月三日の風」の水平社宣言の場面を見せます。
学習プリントの水平社宣言には①~⑥の下線が引かれてます。
問1は①~⑥のどれか1つを選んで考える問題です。
問2は、水平社宣言の授業全体をふりかえる問題と言えます。
動画を見終わったら、問1か問2のどちらかでかまいませんから、とことん深~く考えてください。
そしてその「深い考え」を発表してもらうんですが…。
発表する前に、同じ部分を考えている人と意見を交流して、さらに考えを深めてください。
と述べて、動画スタート!
見終わったら
じゃあ話し合いスタート。
考えが深まったら、その意見を黒板に書いて、下に名前を書いてください。
友だち同士で話し合って深めた意見なら、連名で書いてください。
先生、問1と問2のどっちを選んでもいいと?
いいですよ(^^)
問1より問2が、かなり難しいです。
避けてもいいし、あえて問2を選んでもいいよ~。
でも、全員が問1を選んじゃがっかりかな(^^;)
逆に全員が問2を選んだとしても、問1を考えられないのはもったいないなぁ…
なんて、クラス全員に聞こえるように話します。
ちなみに、この授業では、座っていたら✕です。
おしゃべりしてなかったら✕です。
ひとりぼっちの人を放置していても✕です。
時々見かける、静かで、当てられた子だけが発表する道徳の授業とは対極の授業です。
そして、授業のラスト15分、子どもたちが書いた板書を基に、
この意見、深いなぁ(^^)
と思いっきりほめながら、まるで明石家さんまさんのバラエティ番組みたいに、子どもの意見に対して言葉を返していきます。
この人の考えは言葉は簡単だけど、「差別されてきたからこそ、人間の尊がわかる」「差別の痛みが分かる」ってことを述べてるよなぁ。
深いなぁ(^^)
「差別を恐れずに生きていこう」か。
西光万吉さんたちが、そう感じたのは事実だ。
けれどそこに至るまでの葛藤は、一言で表せないほど大変なものやったね。
だから水平社宣言を読み上げ始めたら、岡崎公会堂に来ていた人たちは泣き始めたんだったね。
「みんな平等に生きる権利をもっている」
いいね~(^^)
「水平社宣言」は部落の人たちだけでなく、すべての人たちが平等になるために書かれた、日本初の人権宣言といわれてるってことを、この意見を書いた人は知ってたんだろうか?
知らなくてこの言葉を書いたんなら、めっちゃ凄いっ!!!
「人間は尊敬されるべきものだ」
僕は部落差別を受けたことがあるおっちゃんやおばちゃんから、この人の意見と同じ言葉を聞いたことがある。
よくこの言葉を黒板に書いてくれた!
ありがとうっm(_ _)m
子どもたちに伝えたいことが板書されてなかったら、こんな風にも言います。
これだけの深~い意見が出せる君たちだから
- 「差別は、人が作ったものだから、人がなくすことができる」
とか
- 「差別は、『差別をする側』の問題だ」
って出るって思ったんだけどなぁ…。
この言葉の意味、わかる?
心で感じられる?
今、君の心の中に湧きだした言葉を発表してくれるかな?
おわりに
『学び合い』de人権学習
もへちゃんは、2010年度から『学び合い』の考え方で数学の授業をしていました。
「血湧き肉躍る人権学習」は、『学び合い』の手法を用いた人権学習の授業だと思っています。
このことは以前、本ブログで紹介したことがありました。
差別用語を口にする授業
差別者が人を差別する際に用いる言葉「差別語」。
この授業では、その「差別語」を用います。
だから
「特殊部落民」や「エタ」は、差別する側が使う言葉です。
この授業ではあえて使うけれど、それはその差別を跳ね返したいからです。
僕自身は、差別をなくすための授業では使うけれど、それ以外の場面では決して使いません。
と熱く語ります。
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