2020/09/15
はじめに
新型コロナウイルス感染症が流行する前であれば、合唱コンクールについては夏休み前にすでに職員会議で提案があり、各クラスの自由曲も決まっていました。
今頃は、クラス合唱の練習真っ只中だったんだけどなぁ…(>_<)
来年のため、
もしかしたら再来年のため…、
いずれ新型コロナウイルス感染症を克服した日のために、
いろんな合唱曲のことを学ぶ「合唱曲の歌詞に込められた思い」シリーズ第2弾は
合唱曲「蒼鷺」の歌詞について書いた通信「◯◯◯中学校3学年だよりミニ No.90」(2018年10月12日発行)を紹介します。
3年1組「蒼鷺(あおさぎ)」
蒼鷺
更科源蔵 作詞、長谷部匡俊 作曲
蝦夷榛に冬の陽があたる
凍原の上に青い影がのびる
蒼鷺は片脚を上げ
静かに目をとじ そして風を聴く
(中略…歌詞全文や合唱動画等は「もへちゃん先生の学級通信の資料置き場」へ)
風は吹き過ぎる
季節は移る
だが蒼鷺は動かぬ
奥の底から魂がはばたくまで
痩せほそり風に削られ
許さぬ枯骨となり
凍った青い影となり
動かぬ
3年1組が歌う「蒼鷺」はとても難しい歌です。でも歌い上げると心がビンビンしてくるすごい歌です。
歌詞の意味を知りたくて、いろいろ調べてみました。
作詞をした更級源蔵さんと北海道の原野
作詞をした更科源蔵さんは北海道に生まれ育った人だそうです。
彼の父とその友人が故郷の新潟を出て、たった2人でこの何もない原野に入植したのは明治24(1891)年。
※入植…開拓する土地や植民地にはいって生活すること
その後、新潟から家族を呼び寄せたり、話を伝え聞いた友人が集まったりで、2年後には7戸がひっそりと暮らすことになったそうです。
7戸とはいっても隣の家まで何キロも離れているようなところでした。
それから10年ほどして源蔵さんが生まれました。
当時、彼らが住んでいたのは「草を積み上げたような小屋」。
- 「家の中まで林の中のように雪が吹き込んだり、雪が顔にかかって寝られない」
- 「雪の積もった布団の上を鼠が走って歩く」家
だったのだそうです。
けれども、そんな風や雪にいためつけられる暮らしをしながらも、7戸の人びとのうち誰一人として生まれ故郷へ引揚げたものはなかったそうです。
それが今から130年ほど前の北海道の原野の風景であり、「蒼鷺」の書かれた背景です。
「動かぬ」アオサギとは?
歌詞の中にある「動かぬ」アオサギは死を意味しているわけではありません。
「動かぬ」アオサギとは、原野に入植し、その土地で生きた人びとの生きざまそのものなのです。
源蔵さんは著書「北海道・草原の歴史から」の最初のページに、詩「蒼鷺」を書き、続けて次のように解説を書かれています。
これを読むと蒼鷺は留鳥のように書いているが、実は渡り鳥である。
ただ、釧路湿原の落日の中に、風に吹かれてポツンと一羽だけ、枯木のように立ちつ
くして飛び立とうともしないその姿に、私の若い血がゆすぶられたのである。それはただ孤独な影を曳いた鳥の姿ということだけではなしに、明治のはじめ、茫漠 とした釧路湿原の奥に入って、風雪に逆撫でされながらついに動かず、この土地の土に化した父母や、その仲間たちの姿がそれにダブって見えたからでもある。
※留鳥…季節による移動をせず、一年中ほぼ一定の地域に住む鳥。例、すずめ・からす
北海道・草原の歴史から(更級源蔵著、新潮社刊)より引用
※落日…沈みゆく太陽
※影を曳く…長い影
※茫漠…広々としてとりとめのないさま
3年1組のみんなはきっと…
3年1組が、寒さや孤独に耐えながらも、春を待ち、幸せを待ち、静かに、だけど決して逃げることのなかった人々の思いを、蒼鷺に例えながら歌い上げてくれるに違いありません。
それは明治の人の暮らしを歌うというだけでなく、3年1組の人たち自身にふりかかるかもしれない困難や苦しみに対しての姿勢にもつながるのかもしれません。
あと8日、とっても楽しみです。
おわりに
ある年、中1の合唱曲の歌詞の意味を学年通信に書こうと思い、調べていました。
- 「怪獣のバラード」…なるほどぉ、こんな思いが込められていたのか!
- 「COSMOS」…作曲した人がどんなメッセージを込めたかを書いてた!ラッキー!!
- 「My Own Road」…む、む、歌詞の意味について解説してるネットのページで、「これこれ!」ってのがないぞ(^_^;)
- 「with you smile」…この曲も、いい感じの解説ページが見当たらない(T_T)
前回紹介した「YELL」や「蒼鷺」は、中3が歌う合唱曲です。
中3が歌う合唱曲って、難しい歌が多いからか、深い意味があるのがほとんどです。
と言うことで、次回も中3が歌うような合唱曲を解説します。
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