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教科書配布…ただ配るだけでなく、子どもの人権感覚を深める方法があります(^^)

2020/05/25

はじめに

もへちゃん
もへちゃん

カンニングの竹山さんの言葉

 2020年5月11日のABEMA Primeというニュース番組で、新型コロナウイルスへの恐怖心によっての偏見や差別について、「教育で差別は無くせるのか?」の議論が行われました。

 番組の司会をされているカンニングの竹山さんが次のように話されました。

 僕は福岡の小学校に行っていて。後で気付いたんだけど、そこは小学校3・4年生ぐらいから様々な同和教育があって色んなことを学んだんです。

          (中略)

 ただ僕は子供時代の同和教育によって、大人になっても差別する人に『それは違う』とちゃんと言えるようになったと感じている。

 だから、もしこの差別問題を大人になった後で、知っていたらねじ曲がった形で捉えたような気がするから、個人的にはこの教育は必要だと思う

ABEMA Primeより

「同和教育」って?

 「同和教育」って知らない方もいるかもしれませんね。

 ざっくり言っちゃうと「部落差別をはじめとする全ての差別に対しておかしさを学び、差別を見抜ける知識を獲得し、差別をなくす行動ができる人づくり」です。

 でも学校現場では、「同和教育」と聞くと緊張する先生がいるのも事実です。

 本当は、全ての教育活動の中で「自分もよし、他人もよし」って考え方を伝えることなんだけどなぁ…

 そこで今回は「教科書配布」の際に、先生が知ってて欲しいことについて書いた「〇〇〇中学校 3学年だよりミニ」(2018年7月12日発行)について紹介します。

朗読劇「◯◯◯◯」

朗読劇「〇〇〇〇」を視聴して

 7月5日、朗読劇「◯◯◯◯」という授業を行いました。
 いかがでしたか?

熱演中の6人

感想1(6組◯◯さん)
 教科書無償の話は聞いてきたけれど、今日のはいつもと違って新鮮で楽しかったです。 

感想2(3組◯◯さん) 
 教科書無償と奨学金制度のために行った運動に関わった方々には感謝しないといけないなと改めて思った。
 朗読、結構難しかったけど、楽しかった。

感想3(6組◯さん)
 朗読してくれた6人の人たちがとっても面白かった。
 各グループで出したタイトルがとっても深いタイトルだった。

感想4(6組◯◯◯さん) 
 朗読劇をすることでより人権のことを学べたし、とても深くまで話があって、しっかりと考えることができました。
 今日、この話を読んで、差別や教科書のことなど、しっかり考え直そうと思ったし、みんなのタイトルを見て、またこういう授業をしたいと思いました。

感想5(6組◯◯◯さん) 
 教科書無償運動のことはだいたい知ってたけど、紫雲丸の事件のことなど知らなかったこともしることができたのでよかった。
 朗読とかしたことなかったけど、思っていたよりできたのでよかった。

感想6(5組◯◯さん) 
 中学1年の時に学習をしたけれど、ここまで深く考えることができませんでした。
 今日のこの学習で、朗読をさせていただいて、実際に読むと、親や子どもの気持ちが伝わってくるような気がしました。
 けっこう昔の話だからとかではなく、親や子どものメッセージをしっかり受け取って、未来へつなげていきたいと強く思いました。

朗読劇「〇〇〇〇」

 あなた達はここまで読んで、7月5日に行った人権学習のことを思い出すことができますが、学年だよりミニ・ファンの保護者の方はちんぷんかんぷんかもしれませんので、解説しましょう(^^)

 この日の授業で配った学習プリントには次のように書かれていました。

 今日の学習は、「朗読劇(役者が台本を持って音読するスタイルで上演される劇)を行います。

 学級で、音読が上手な人6名に出てきてもらい、先生から渡された台本を読んでもらいます。

 「朗読劇」を視聴した後、皆さんには、この劇にふさわしい「タイトル」を考えてもらいます。

朗読劇「〇〇〇〇」のあらすじ

 4月になると、入学・進級した小・中学生は、それぞれ学校で、その年1年間に勉強する教科の真新しい教科書をもらいます。

 義務教育では、教科書が無償(ただ)で子どもたちに渡されているのは普通のことと思われていますが、昔は教科書を買わなければなりませんでした。

 教科書無償化は1964( 昭和39)年から実施されました。

 無償化運動のきっかけとなったひとつの事件、それは…

紫雲丸(しうん)事件

 四国へは、今は瀬戸大橋で渡れますが、以前は連絡船しか渡る方法はありませんでした。

 1955( 昭和30年)5月11日、高松を出港した紫雲丸が、濃い霧のため高松市女木島付近で、別の連絡船と衝突しました。

 わずか4分で沈没し、168人の乗客が亡くなるという大事故になりました。

紫雲丸の事故を報道する四国新聞 1955年

 沈没した紫雲丸には、京都や奈良方面へ向かう高知県の中学生117人の修学旅行生が乗っていました。

 そのうち28人の生徒が亡くなり、死亡者のうち16人が被差別部落の子どもたちでした。

なぜ被差別部落の子どもたちに多くの犠牲者が出たのでしょうか。

 保護者はわが子のために、借金して修学旅行に参加させてやりました。

 カバンなども、親戚や知りあいからの借り物が多く、「絶対なくしたらいかんぜよ」と言われてました。

 このような中で衝突事故が起こりました。

「甲板から船室へカバンなどを取りに戻ったため犠牲が多かったのではないか」

と助かった人は証言しています。

  • 義務教育最後の友達との思い出を作らせてやりたいと修学旅行へ参加させた保護者の願いや思い。
  • 借りた物を返さなければならないと思った子どもたちの心。

 子を思う優しい心と、借りたものを返さなきゃと思った子どもの優しい心が、犠牲を大きくしたのです。

紫雲丸事件がきっかけで

 この事件をきっかけに、この町では

差別と貧しさからの抜け出すために、「子どもたちに満足な教育を受けさせてやりたい」という保護者の気持ち

が高まって行きました。

 この高まりの中から、1961( 昭和36) 年、高知県から教科書無償化の運動が起こり、その思いが今につながり、君たちが9年間手にしてきた教科書は無償(ただ)だったのです。

そして、朗読劇の場面は現代へ…。

 あなたたちのほとんどが、間もなく高校へ進学します。

 中には大学まで進学したいと考えている人もいるでしょう。

 それなのに、経済的な理由で進学をあきらめたり、希望する学校に行けないことはとても残念なことであり、おうちの人にとっても身を切られるほどにつらいことです。

 人の能力は、学歴だけで測ることはできませんが、現実には学歴による賃金の格差は存在し、悪循環が起こってしまいます。

 けれど、教科書無償運動をすすめた、かつて部落差別で苦しんだ親たちが、福岡県の奨学金制度を、だれもが利用しやすいものに改善していきました。

 「教科書無償」や「奨学金制度」は、差別をなくし全ての子どもが平等に学べることを願った被差別部落の人々をはじめとする多くの人々の運動の結果勝ち取られたものです。

 だからあなたたちが進路実現に向けて努力していくことが、多くの人の思いを大切にすることにつながるのです。 

授業では、朗読劇を視聴した後に、ふさわしい題名を考えます

 みんなが考えたタイトルはとても素敵なものがたくさんありました。

 次号で紹介します。

おわりに

もへちゃん
もへちゃん

朗読劇「〇〇〇〇」についての補足

 このとき行った授業の名前が「朗読劇◯◯◯◯」だったのには訳があります。

 インターネット上のプライバシー配慮のための伏せ字ではなく、朗読劇にぴったりの題名を、後から子どもたちに考えさせるから◯◯◯◯としたわけです。

 通信の中で紹介した「紫雲丸事件~教科書無償運動~福岡県奨学会」について触れたシナリオは、B4版で4枚の量です。

 プレゼンには37枚の画像を用い、挿入歌として米津玄師さんの「Lemon」、エンディングにやなせたかしさん作詞の「手のひらを太陽に」の歌を挿入しました。

 班で一番文章を読むのが上手な人に前に出てきてもらい、その子ら6人が語り手、担任の先生が音響とプレゼンを担当。

 演じると12~13分程でした。

あ・い・う・え・おの人権教育

 ただ資料を読むのではなく、朗読劇の形をとり、クラスの友だちが演じていて、内容も感性を揺さぶる工夫を至る所に入れ込む

 これを「あいうえおの人権教育」といいます。

  • あ…明るい
  • い…いい加減(ほどよい加減)
  • う…嬉しい
  • え…笑顔
  • お…おもしろい

でも2020年にこんなとりくみする余裕はない(>_<)

 今年(2020年)は、新型コロナウイルスによる休校で、何をするにしても時間がないでしょうから、教科書配布に時間をかけることは困難だったと思います。

 でも、

  • 先生が「教科書が無償になったわけ」を知ってて、配る際に3分くらい語れていたら…
  • 教科書を配布した日の学級通信に書いていたら…

 そんな積み重ねの先に、カンニングの竹山さんのような発言が待っているのだと思います。

 いや、まだ遅くはないと思います。

 何かの拍子に、教科書が無償になった理由が、

  • 部落差別の結果だったこと
  • 子を思う優しい心と、借りたものを返さなきゃと思った子どもの優しい心が、犠牲を大きくしたこと
  • 差別と貧しさからの抜け出すために、「子どもたちに満足な教育を受けさせてやりたい」という保護者の気持ち

ってことを、さりげなく語ってあげてください。

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