2020/11/18
はじめに
受験前になるとよく話題になる「入試の傾向」。
本屋さんに売ってる問題集にもその手の題がついているものもよくあります。
大手の塾では独自で傾向を分析しているようですし、ネットを検索するとたくさん出てきます。
そういうものを利用するのもいいのですが、もしあなたが中学校の先生だったら、一度自分なりに分析しておくと、子どもたちに話す際、言葉に力がこもります。
もしあなたが福岡県在住の中3生自身だったり、中3生の子どもを持つ保護者なら、今回のブログは結構役立つはずです(^^)
もしあなたが他県在住の方(中3生、保護者、先生…)なら「分析のしかた」そのものが役立つはずです。
思考力・判断力・表現力
人を納得させられる「表現力」というのは、最近、文科省が求め始めている「思考力・判断力・表現力」そのものです。
公立高校・私立高校ともにこれらの能力を測る傾向の入試問題が増えつつあるのは、福岡県だけでなく全都道府県の傾向です。
入試の傾向を探る
さて、入試の傾向を探るために
数年分の問題を解いて、なんとなく傾向を感じ取る
というのは「分析」とは言えないと私は思っています(以前の私はそうでしたが…笑)。
「なんとなく傾向を感じた」と伝えるのではなく、はっきりとした根拠を述べながら「入試の傾向」を語ることは、子どもたちに「表現力」の具体例を示すことになると考え、通信で出してみました。
そこで今回は、福岡県の公立高校入試の数学の問題の傾向を、中3生に向けて書いた「◯◯◯中学校3学年だよりミニ No.134」(2018年12月19日発行)を紹介します。
分析
福岡県の公立高校の数学の入試問題の傾向を探るといろんなことが見えてきます。
例えば大問1の(1)には正負の計算が毎年出ています。
えっ?
そんなことわかりきってるって?
けれど問題を並べてみると見えてくることがあるんです。
大問1の(1)について
2×(-4)+10 (2000年)
9+3×(-2) (2001年)
8+(-3)×2 (2002年)
(-2)×4+9 (2003年)
7+(-4)×2 (2004年)
(-2)×3+5 (2005年)
8+(-2)×3 (2006年)
4×(-2)+6 (2007年)
11+5×(-3) (2008年)
7+2×(-3) (2009年)
7+5×(-2) (2010年)
10+3×(-2) (2011年)
9+4×(-3) (2012年)
1+3×(-2) (2013年)
7+3×(-5) (2014年)
6-2×(-3) (2015年)
9+(-2)×7 (2016年)
13+3×(-6) (2017年)
11+2×(-7) (2018年)
これらから言えること
分析
- 分数は出ない
- わり算は出ない
- 答はいつも1桁
- 数字は3つ
あっ、いけない!分析3については、2015年の問題の答が2桁でした。
大問1の(2)について
同様に大問1の(2)を見てみましょう。
3(a+2)-(a-1) (2000年)
5(a+1)-(a+4) (2001年)
2(a+3)-(a-1) (2002年)
4(a-1)-(a+3) (2003年)
3(a+5)-(a-2) (2004年)
2(a-1)-(3a-4) (2005年)
3(a+3)-(2a+4) (2006年)
2(3a+1)-(2a-5) (2007年)
3(3a-1)-(4a-7) (2008年)
4(2a-3)-(3a-5) (2009年)
2(3a-2)-(4a+1) (2010年)
3(2a-1)-(a-1) (2011年)
4(2a-1)-(5a-3) (2012年)
2(2a-5)-(a-3) (2013年)
3(2a+1)-4(a+2) (2014年)
2(3a+2)-3(a+1) (2015年)
5(3a+2)-3(4a+6) (2016年)
3(2a+3)-2(5a+4) (2017年)
2(3a+4b)-(2a-b) (2018年)
これらから言えること
分析
- いつもカッコとカッコの引き算
- 分数、小数は出ない
- 2013年までは後ろのかっこのすぐ前に数字はなかったけれど、2014年~2017年までは後ろのカッコのすぐ前に数字が付いた
- 2018年、後ろのカッコのすぐ前の数字は無くなって2013年以前に戻ったけれど、初めて文字が2種類になった
- 用いられる文字はa(2018年はaとb)
昨年までは
大問1の(2)は文字式のカッコとカッコの引き算が出ます。
しかも出る文字は『a』です
と言って笑いをとっていたのですが…。
大問1の配点について
もう少し役に立つ分析を書きましょうね。
福岡県の公立高校入試の数学において大問1の配点は、この20年間ずっと約20点。
福岡県の公立入試は60点満点なので、な、な、なんと、大問1だけで全体の3分の1の配点です。
この傾向は変わることはないと思われます。
さらに、入試後半に出てくる超難しい問題(偏差値70レベルくらい)の配点は、大問1の1問1問の配点とほとんど変わりません(1問2点とか3点程度)。
だから、大問1の計算問題で満点を取ることが超大事なのです
記述式の問題
大問2~6についての福岡県の入試問題の特徴は、問題文がとにかく長いということが挙げられます。
さらに2020年の大学入試変革の影響で、ここ1~2年、記述式の問題が増えてきました。
例えば、大問2は、ここ20年ほど、方程式の文章問題でしたが、2018年で「文字式の証明」に変わりました。
こんなにも大きく変わるなんて!!!
と私を含む福岡県の中学の先生たちはとてもびっくりしました。
記述式の問題を解くために必要な力は
- まず、長文の問題を短時間で正確に読み取る力
- 次に、正確に説明できる論理力
- そのためには数学用語の意味を正しく知っていることや、普段から図や表などいろいろなもので説明するくせをつけておくことです。
「配点」という視点で言わせてもらうと、大問2~6の中にちりばめられた「記述式の問題」の配点は、2017年は14点分でした。
しかし2018年は20点、約3分の1になりました。
この傾向はますます進んでいくと思われます。
もへちゃん流「数学が苦手な人が、県平均点をとる方法」
ここまで読んで不安になった「数学が苦手な人」、大丈夫です!
私は、高校時代、数学のテスト100点満点中8点をとっていた男ですよ(笑)
そしてそこから這い上がった男です!
そんな私が、数学が苦手なあなたにアドバイスをしましょう。
福岡県の公立入試数学の平均点は約30点です。
① まず大問1で満点をとればもう21点です(^^)。
「大問1で満点」に向けては努力・努力・努力あるのみです!
② そして次に点数を稼ぐ場所として、私のおすすめは図形の証明です。
ここで5点。
まず定理を片っ端からど暗記しましょう。
③ 次に、2017年以前だと大問6で「ねじれの位置」を解いて2点だったのですが、2018年、「ねじれの位置」は大問1に入れられちゃいましたので、この技は使えません(T_T)
④ そこで出てくるのが「大問2~5の(1)を正解する」作戦です。
これらを正解することで、残りの問題を一切解かなくても(捨ててしまっても)、平均点、すなわち偏差値50の得点をとることができます(^^)
大問2~5の(1)を解く力…「読解力」「表現力」
大問2~5の(1)は、解説を聞いて解いてみると「な~んだ、こんなやり方でいいんだ」と拍子抜けするような問題なのですが、入試では自分1人で問題文の長い文章を読み、何を求めるべきかを理解する力が必要になってきます。
では、このような「読解力」や「表現力」という力をどうつけていけばいいでしょうか?
『学び合い』の考え方を用いた授業
それは
普段から、『友だちに説明する練習』で付ける
です。
数学が苦手な人に説明することで、苦手な人はわかるようになります。
さらに得意な人は「思考力・判断力・表現力」を鍛えることになります。
どちらにとっても得なのです。
仲間を誰1人見捨てないことが、仲間のためだけでなく、自分のためにもなるんです。
みんなで頑張りましょう!
おわりに
それ以外の分析結果は
紙面の関係で、もへちゃんが分析した大問1の(2)以降、大問2~6のことは書けませんでした。
書けなかったことは、教科書を教え終わった後の1月~3月の授業で過去問を解かせるので、その際に少しずつ子どもたちに伝えました。
また、1月~3月の授業でも『学び合い』の考え方で授業をすすめていましたので、子どもたちはどんどん教え合っていました。
(あなたが先生ならば)自分自身で分析することのすすめ
ネットで調べるのとは違い、自分で分析するには、それなりに時間がかかります。
私の場合は、ある年の冬休み、一念発起して、
- 本屋で買ってきた福岡県入試問題集(5カ年分)
- それまで毎年切り抜いてとっていた新聞に載った入試問題の記事
- 数年前に買った福岡県入試問題集(5カ年分)
等、集められるだけの入試問題の過去問を集めて、問題を書き出して比較しました。
調べてみると、ネットで分析してることとほぼ同じ結果になったりもしました。
けれど、それ以外にも気づいたこともありました。
一番の成果は、私自身が自信満々で子どもたちに語ることができたこと。
いや、人を説得する(表現力)ための具体例を示すことができたこの通信が、一番の成果かもしれません(^^)
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