2020/10/15
はじめに
「はく息」か「吸う息」か
以前出した問
赤ちゃんの最初の息は「吸う息」か、「はく息」か
おわかりですか?
授業で、子どもたちに見せた画像と解説がこれです。
多くのあかちゃんが、口やのどに粘液をつけたまま生まれてきます。
助産婦さんが、プラスチックの管(気管カテーテル)で、粘液をすいとってくれます。
あかちゃんは息をすいこんで、うぶ声をあげるのです。
誕生の詩(うた)トーマス=ベリイマン作 偕成社刊 より引用
この男の子は、どこかが痛いとか、こわいとかいうので、泣いているのではありません。
あかちゃんは自分ではじめて呼吸するために、うぶ声をあげなくてはならないのです。
あかちゃんはママのおなか(子宮)のなかでは、息をするのに自分の肺を使いませんでした。
わたしたちが息をするときに、空気ちゅうからとりこまなければならない酸素を、あかちゃんはママの血液からとっていたのです。
でも、生まれ出るとあかちゃんの肺は、すぐ空気でいっぱいになるので、その空気をもう一度外へおしだすために、大声で泣くのです。
2,3度呼吸したあとは、自然と息ができるようになり、泣き止みます。
誕生の詩(うた)トーマス=ベリイマン作 偕成社刊 より引用
そんな授業を受けて、子どもたちがどう感じたかを書いた通信「学級記録 No.45」(1996年10月2日発行)を紹介します。
思春期へのメッセージ 1時間目の授業を受けて
記録53
子どもを生むのが大変なのは聞いていたし、うちのお母さんが、私もお兄ちゃんも生まれたときサルみたいだったと言っていたけど、写真を見たらサルの方がかわいいと思った。
記録54
赤ちゃんを生むのに死ぬほどきついと母親から聞いたことがある。
それを必死でのりこえて生んでくれた。
今はとても感謝している。
記録55
生む時には、すごい苦労しているんだなぁと思った。
初めて知った。
お母さんは何も言ってないし、自分の方からも聞いてない。
今日、「生みの苦しみ」を知った。
記録56
生まれることはすごいと思う!
生む人は大変だ。
生まれる人も大変だ!!
記録57
どうやって生まれてくるのか、ちゃんとわかった。
なんか、文とか読んで、ちょー痛そうと思った。
さくらももこの本(「こういうふうにできている」)を読んで、帝王切開の後が大変ってわかったから、自然に生むのも、お腹切られるのも嫌。
記録58
赤ちゃんは、はじめに「吸う息」だったことがわかった。
私は3人目だったから、苦しくなかったらしい。
記録59
女の人は、いろいろすごいと思った。
記録60
赤ちゃんは、出てくる時「吸う」と思ってた。
自分が生まれる時、タクシーの中で生まれたって聞いた。
記録61
麻酔もしないで生むから、すごいなぁと思った。
記録62
赤ちゃんの一番初めの息は「吸う」ということや、「生みの苦しみ」ということを初めて知った。
今まで、お母さんにこんな話を聞いたことなかったので、授業で聞いて驚いた。
おわりに
聞いたことない
この通信を発行したのは1996年です。
このころでも「生まれた時の話」を聞いたことがないって子が何人もいました。
たぶん当時より今の方が、お母さんが働いている割合は高いと思います。
すると「生まれた時の話」を聞いたことがないって子は、当時より多いかもしれません。
一方でインターネットの普及で「性の裏情報」は、以前よりもっと手軽に子どもたちが入手できます。
そう考えると「先生ががんばらなきゃ!」と思ってしまいます。
多忙化
でもなぁ、毎晩22時、23時に帰宅し、朝は7時半には学校に行かなきゃ仕事が終わらない今の学校です。
だから「しなければならないから、やりましょう」と提案しても受け入れてもらうのは困難です
多忙化以外のハードル
一応、中学校の道徳の授業で、教えなければならない22項目の中には「生命の尊さ」というのがあります。
しかし、
3時間計画、4時間計画で『生命の尊さ』をしたい
と言うと、たぶん
1つの項目に何時間も使うのは、やめてください。
22項目をまんべんなく行ってください
と指導が入ったりします。
まっ、そんな指導をしてくる方は、「感性を揺さぶる性教育」をしたことも見たこともない方ってことがほとんどです。
そんな指導が入るから、今の若い先生は「感性を揺さぶる性教育」を、たぶんできません。
そんな今の若い先生たちも10年、20年経てば、職員全体の牽引役になっていきます。
すると…
悪循環ですね(T_T)
子どもの現状に沿った道徳の授業ではなく、教科書に載っている偉人の話だけの道徳の授業になってしまいそうです(T_T)
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