2020/05/27
はじめに

前々回のブログで紹介した人権学習「朗読劇◯◯◯◯」のあらすじを紹介します。
1955年の紫雲丸事件で、差別ゆえ貧困ゆえに多くの子どもを亡くした親たちの思い…
子どもを亡くす悲しみを繰り返してほしくない差別を無くしたい
そのために子どもたちに教育を受けさせたい
〇〇〇中学校 人権教材 朗読劇「〇〇〇〇」より

その思いを持ったムラの親たちが、1961年に教科書無償運動を立ち上げたのです。
その運動は全国に拡がり、義務教育の教科書は無償になりました。
〇〇〇中学校 人権教材 朗読劇「〇〇〇〇」より

そして2002年、「解放奨学金」の廃止にともない、福岡県では「高等学校奨学金」制度を立ち上げていきました。
その際、被差別の立場に立たされている人たちが様々な実態や要望を挙げ、「経済的理由により修学に困難がある」生徒に対し、「社会に有為な人材の育成」と「教育の機会均等に寄与すること」を目的に、全ての子どもが「借りやすく、返しやすい奨学金」にしていきました。
〇〇〇中学校 人権教材 朗読劇「〇〇〇〇」より
朗読劇を見た後(クラスで6人は「演じた後」ですね)、「この劇に対して題名をつけよう」と個人で考え、その後、班でディスカッションしました。
子どもたちはどんな題名を考えたのか?
そのことを書いた通信「〇〇〇中学校 3学年だよりミニ No.60(2018年7月17日発行)を紹介します。
朗読劇「◯◯◯◯」②
前号にひきつづき、授業・朗読劇「◯◯◯◯」の話です。
朗読劇を見聞きして、ふさしいタイトルをつけようと、まず個人で考えた後、班で話し合ってもらいました。

みなさんが書いた学習プリントを見せてもらうとすてきなタイトルがた~くさん(^^)
各学級の議論の中身はわかりませんので、「勝手にもへちゃんセレクト」を紹介します!
朗読劇「〇〇〇〇」…子どもたちが考えたすてきなタイトル
記録8(4組◯◯さん)
「これからの日本を担うみなさん」
どの教科書にもそう書かれているから。
記録9(5組◯◯さん)
「人々の思いをのせて」
いろんな思いが1つになり、教科書無償運動が行われるようになったから。
記録10(1組◯◯さん)
「親の努力」
「教科書無償」や「奨学金制度」は、差別を無くし、全ての子どもが平等に学べることを願った親の努力があったから。
記録11(3組◯◯さん)
「差別と教科書」
教科書は義務教育では無償となっているけれど、それは昔の差別されていた地域の方が、我が子を思い、がんばった結果だから。
記録12(1組◯◯さん)
「努力の結晶」
差別をされていた地域の親たちが運動を起こして、最後まで闘い、ついに勝ち取ったものだから。
記録13(5組◯◯さん)
「教科書の真相」
なぜそのムラだったのか。修学旅行で何で被差別部落の子ばっかり犠牲が出たのか、すべてのことが書いてあるから。
記録14(3組◯◯さん)
「全ての子どもに教育を」
教科書無償や奨学金制度は、差別のない平等な教育を受けさせるために実現されたから。
記録15(3組◯◯さん)
「全ての子どもに教育を」
奨学金制度などは、差別を受けた人々が、差別のない世の中を目指して、運動を起こして創ったものだから。
記録16(3組◯◯さん)
「人権と教育」
今の教科書無償や奨学金制度は、差別された人や、貧しい人々の強い願い、そして憲法にも「子どもに教育を受けさせる権利」「人権の尊重」があったからこそ、実現できたと思う。
記録17(5組◯◯さん)
「メッセージ」
- 部落差別を受けていたムラの人たちの悲痛な思いがひろがって、教科書無償につながったから。
- 紫雲丸事件の悲劇から、たくさんの思いが、写真から伝わってきたから。
記録18(6組◯◯さん)
「平等に学ぶために」
もともと差別されていた人たちによって起こされたことで、すべて、平等に子ども達に学んでほしいという親の思いから生まれた運動だから。
記録19(6組◯さん)
「部落差別とたたかった人々」
昔、部落差別とたたかった人がいなかったら、教科書が無償になっていないから。
記録20(6組◯さん)
「全ての子どもを平等に」
「教科書無償」や「奨学金制度」ができたのも、たくさんの人が、「全ての子どもを差別がなく、平等にしたい」という願いがあったから。
記録21(5組◯◯◯さん)
「全ての子どものために…」
差別を受けているから、自分の子どものためだけに行ったのではなく、全ての子どもが無償で教科書をもらえるように運動したから。
記録22(1組◯◯さん)
「いつの時代も」
いつの時代の母の気持ちも変わらないし、未だに差別はなくなっていないから。
もへちゃんセレクトの選考基準は?
私は10年ほど前に「教科書無償の地」を訪ねたことがあります。
そこで「小さかった頃、親や近所の人が教科書無償運動でがんばっていた」という年配の女性の方に話を聞かせてもらいました。
紫雲丸事件もその時、初めて知りました。
私がその時感じた思いや、話してくれたおばちゃんが言ってた言葉と近いことを「タイトルの理由」に書いてくれた人をセレクトさせてもらいました。
教科書無償の地で私が学んだこと
尋ねた地で、私は教科書無償運動を闘った方たちの思いを知りました。
悲しみや悔しさ、そしてたくさんの人たちとともに闘った結果、日本全国の子どもに無償化を実現できたという誇り高さも感じました。
その後、学校での「教科書無償」の学習の時に、これらの思いを伝えるように行動してきました(今回は朗読劇のシナリオを書きました。
がんばったでしょ(^^))。
私もあと5年で退職です。
次の世代(あなたたちの子ども、先生になる人がいたら教え子たち…)に「教科書無償に秘められた思い」を伝えるのは、あなたたちに頼みたいです。
部落差別をはじめとする全ての差別をなくすコツ
コツは「知って→感じて→行動する」です!(^^)
おわりに

涵養(かんよう)…自然にしみこむように、養成すること
先生というのは、子どもたちに日々接することができるのですから、日常のできごとの中に人権教育を打ち込みたいものです。
そうすることで、水がゆっくり染みこんでいくように、ジワジワと子どもの心に人権感覚は育っていくと考えています。
「涵養」…自然にしみこむように、養成すること。無理のないようだんだんに養い作ること…そんなイメージです。

お気づきでしょうか…今回紹介した通信の発行日
さて、お気づきの方もいらっゃるかもしれませんが、今回紹介した3学年だよりミニは、7月17日に発行しています。
教科書無償の学習をするのは「日常の出来事の中に」というくせに時期があっていません。
教科書配布は、年度初めなのです。
教科書無償の話をするなら、やっぱり配布する時
教科書配布の日、時間があるなら、目の前に、クラスの人数分✕教科数分の大量の教科書をズラーッと並べて、教科書無償の話をした方がいいと思っています。
ちなみに、私が今まで勤務した学校のすべてが、教科書配布の時間は、4月の最初、時間割の1コマ・50分間でした。
実際に配布もしなければなりません。配布にかかる時間を30分としたら、話ができるのは残り20分。
そこで
- 1年生では「教科書無償運動を起こした親たちの思い(部落差別のことは語らず)」
- 2年生では「紫雲丸事件と教科書無償運動(部落差別について語る)」
- 3年生では「福岡県奨学会のなりたち」
と、年度初めに20分間の「教科書無償運動についての学習」にとりくんできました。
ではなぜ7月?
ではなぜこの「朗読劇◯◯◯◯」の授業を7月にしたのか?
実は「朗読劇◯◯◯◯」の授業は、私が学校を異動した最初の年のとりくみです。
1年目ということで、その学校の前年までのカリキュラムを変えることができませんでした。
カリキュラムでは、中3生の7月に「奨学金」の授業をするという案が出されました。
そのカリキュラムには紫雲丸事件のことは当然出ていませんでした。
この学校では1年生で「教科書無償の学習」をしていました(部落差別のことには触れずに)。
そして2年生では教科書無償については学んでいませんでした。
そこで代案を出したのが「朗読劇◯◯◯◯」だったわけです。
苦し紛れにひねり出した授業としては、いい出来だとは思いますが…。
私はやはり「20分間✕3年間」の方がいいと思っています。
あなたの立場でもできます!
- このブログを読んでくださってる方が先生で、学年としてとりくむことが難しかったり、学校としてそんな時間をとれない場合、担任の先生が学級通信で語ってあげるのもいいと思います。
- このブログを読んでくださってる方が、保護者やじいちゃん・ばあちゃんの場合、さりげなく子どもに聞いて、教科書無償のことを知らなかったら、どうぞあなたの言葉でお伝えください。
- このブログを読んでる方が、もへちゃん組の卒業生だったら、今でも、全ての差別に対して「知る→感じる→行動する」貫いてますか?
もへちゃんは…もう少ししたら復活できるかな(笑)
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