2020/10/30
はじめに
もへちゃんが勤務する地区の中学校の多くは、年に3回、3年間の在学中に9回の人権学習にとりくみます。
- 5月23日前後
- 10月31日前後
- 1月28日前後
に行う3回の人権学習を「節目の人権学習」と呼んでいます。
なので10月31日に、人権学習のことを書いた通信を紹介しようと思っていました。
ところがつい先ほど
今年の10月31日は土曜日じゃん(>_<)
と気づきました。
ここ「もへちゃん先生の学級通信」は平日に更新しており、
土曜はドライブブログ
- 「もへちゃんのドライブ日誌(福岡からの日帰り、絶景、グルメ)」(新型コロナで遠出自粛につきネタ切れのため、更新中断中)
日曜・祝日は工作ブログ
- 「もへちゃんの工作の時間『大人のできるかな?』」
を更新しています。
そこで10.31には1日早いのですが、就職差別を題材にした人権学習について書いた通信「◯◯◯中学校3学年だよりミニ No.106」(2018年11月6日発行)を紹介します。
Stop The 就職差別
3年生になっての2度目の人権学習の名前は「Stop The 就職差別」です。
この学習は2時間計画で行います。
1時間めは、就職試験の際に書く書類について1976年当時のものを使って学習します。
2時間目は「◯中ドラマ 『就職面接・YさんとNさんの場合』」を楽しんでもらいます!(^^)!
10/26の研究発表会で、◯◯区の先生方に見てもらうため、すでに2時間とも学習済みのクラスもあるし、1時間目だけ学習したクラス、まだ1時間目を受けてないクラスもあります。
まだ学習してないクラスのみなさん、お楽しみに~(^^)
さて、すでに2時間とも学習し終わったクラスの感想が深いんですっ!
皆さんに紹介したい!
でも全てのクラスが終わるまでもうしばらくかかりそう‥。
学年主任の先生に相談したところ
「こんな学習があるのか」という予告みたいになるから、感想を紹介されてもいいと思いますよ
とのこと。
そこでネタバレ覚悟で紹介します!
授業の感想(ネタバレあり)
引用枠内の文章が感想です。そのあとの赤字は私がかき添えた赤ペンの一言です。
「◯中交通の面接試験」の動画を見て、自分も答えたくない質問もあって、絶対に差別質問をなくしてほしいなと思いました。
自分のいい点を「売り」に行っているのに答えたくないこと、自分の評価をさげるようなことを聞かれたくありません。
これから先、まだ完全になくなっていない差別質問を、自分たちの力でなくしていきたいです。
僕は「教育」の場で、次の世代を担う若者に伝え続ける。
それが僕の「差別との闘い」だ
他人事のように考えたら「録音して訴える」など出てきましたが、自分の事と考えた時、「本当にそれが自分の立場だったらできるかな?」と思いました。
「人ごと」ではなく「我がこと」として考えられ始めたな!
じゃあ「差別される人」を「我がこと」としてとらえたら(自分が差別される立場だったとしたら)、就職差別に対して、君はどう行動する?
私には父がいないので、このような質問があると知り、怒りを持ったし、少しドキッとしました。
でも、聞かれても「学校で指導されている」などの理由を使い、答えられるようにしたい。
「怒りを持った」…正しい怒りだ!
そして正しい社会に近づけるよう、ともにがんばろう
もしも僕が就職面接でこのようなことを言われると思うと、ひどいことだと思います。
自分に関係ない親の年収とか出されたら困る。
その通り!
自分のがんばり、自分の能力を見てもらえる社会にしていこう
高校生の発想がすごいと思います。
自分を犠牲にせず、みんなを助ける案が思いついたのはすごいと思います。
差別と闘うためのキーワードの1つに「自分もよし 他人もよし」というのがある!
私は今日の授業を受けて、差別質問をもし自分がされたとき、正しい対応ができるよう、このことを覚えておきたいです。
でもそれ以前に、差別質問がなくなるのが一番いいです。
まさにそのとおり!
けれど何もしなくて自然になくなることはない。ともに差別と闘おう!
福岡県は(就職面接時の違反質問が)75件で他の県より少なかったけど、誰でもその中の1人になりたくないし、そんな差別はあってはいけないから、0件にすべきだと思いました。
そのためにはあなたの力がいる。
ともにがんばろう
差別をされる人が0に近づくように行動しないといけないと思った。
僕も部落差別をはじめとする様々な差別を知ってから闘い続けてきてる。
君もいっしょに闘おう!
福岡は今、差別質問は少なくなってきているけど、まだなくなっていないから、本人の努力を一瞬で無くすような就職差別をなくしていきたい。
「本人の努力を一瞬でなくす」…これが差別の本質だ。
就職だけでなく、結婚の時にもある。
中学卒業までに伝えたいと思っている
こういうプリントをしなくてもいいような社会になればいいな。
そのとおり!
差別を残してしまっている大人の1人として、君たちに謝らなきゃならない
差別は減ってきてはいるが、なくなったわけではない。
もし自分が面接で差別を受けてしまった場合、対処できるようにしておかなければならない。
そのためにも返答すべき質問か、判断できる力が必要と感じた。
「もし自分が面接で差別を受けてしまった場合」…「人ごと」ではなく、「我がこと」で考えられている!
「返答すべき質問か判断できる力が必要」…そのとおり!差別を見抜く力が、まず必要なんだ
福岡でさえも75件もあって、その中の1人だったら本当に嫌です。
そのとおり!だから「就職差別0」になるまで、ともに闘おう!
これから、差別をなくしていきたいです。
いいね~。
「なくしてほしいです」と感想に書かれるとがっかりする。
君のように「なくしていく」と書く人となら、ともに闘えるって思えて嬉しい!
おわりに
1976年当時の社用紙にあった項目
1時間目の授業では、1976年当時の社用紙の項目の必要性を、選考される立場・選考する立場で考えさせました。
こんな感じです。
新しい応募用紙を考えます。
あなたならどれを残しますか。
10個以下にしてください。
1 | あなたの名前 | 12345 |
2 | あなたの生年月日 | 12345 |
3 | あなたの国籍・本籍地 | 12345 |
4 | あなたの友人の住所 | 12345 |
5 | あなたが志望した理由 | 12345 |
6 | あなたが所属していたクラブ | 12345 |
7 | あなたが尊敬している人物 | 12345 |
8 | あなたの短所 | 12345 |
9 | あなたの信じている宗教 | 12345 |
10 | 保護者の名前 | 12345 |
11 | 保護者の勤めている会社名 | 12345 |
12 | あなたの家の広さは、たたみ何畳分? | 12345 |
13 | 保護者の健康状態はどうか? | 12345 |
14 | 家で読んでいる新聞の名前 | 12345 |
15 | 家は持ち家か、借家か? | 12345 |
16 | 今の家に何年住んでいるか? | 12345 |
17 | 近所で親しい人の名前は? | 12345 |
18 | 家や土地などの財産の総額は? | 12345 |
19 | 保護者の年齢は? | 12345 |
20 | 保護者とあなたの関係は? | 12345 |
21 | あなたの家族構成は? 誰と住んでいるの? | 12345 |
22 | あなたの性別は? | 12345 |
23 | あなたの希望の職種は何? | 12345 |
24 | 保護者の年収はいくら? | 12345 |
25 | あなたが持っている資格は? | 12345 |
26 | あなたの趣味・特技は? | 12345 |
27 | 保護者の最終学歴は? | 12345 |
28 | あなたの友人の学校・会社はどこ? | 12345 |
29 | 支持している政党名は? | 12345 |
30 | あなたの学歴・職歴は? | 12345 |
31 | あなたの現住所は? | 12345 |
32 | 家族の信じている宗教名は? | 12345 |
33 | 保護者の勤務年数は? | 12345 |
34 | 保護者が死亡していたら… それはいつ?原因は? | 12345 |
35 | 最寄りの駅からの地図 | 12345 |
1書きたくない
2あまり書きたくない
3どちらでもいい
4別にかまわない
5もちろん書く
社用紙の35の項目の必要性を5段階で判断した後に、不必要な項目が就職差別を引き起こした事実を伝えました。
しかし、それで終わってしまうと、展望を見いだせなくなっちゃいます。
就職差別をなくすとりくみ
実際は、1976年の◯◯交通株式会社が起こした就職差別事件は、被差別の立場の高校生や学校の先生、労働局などにより差別性が明らかにされ、解決しました。
行動することで変えられてきた歴史があるのです!
さらに、この社用紙の差別性に対するとりくみは、今では
- 厚生省の通達「差別選考につながる14項目」
- 統一応募用紙(新たな社用紙)
という形あるものを作り上げていきました。
授業では、さらにアメリカの履歴書(日本語訳したもの)を見せました。
ちなみにこのアメリカの履歴書には年齢、性別さえもありません。
この授業の最後には
この授業で子どもたちは
社用紙による差別はもうなくなった(^^)
よかったぁ(^o^)
と安心しました。
安心しきっている子どもたちに向かって、授業の最後に、次のように言いました。
就職する時は、履歴書による書類選考の他に、面接があるってわかってる?
次の時間は面接の場面での差別について考えます。
えっ!(^^;)
不安を残して、1時間目の授業終了です。
参考にした書籍
ちなみに1976年の就職差別事件については、友人からもらった
わらいがおがイイオトコ
教員 樋口輝幸 ー靴減らしの教育実践の軌跡ー
発行「わらいがおがイイオトコ」編集委員会
という本で学びました。
樋口輝幸さんは、熊本県部落解放研究会の事務局長を永年勤められた高校の先生で、私の友人の恩師です。
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