2022/02/15
はじめに
前回までの約1ヶ月間、「伝説の生徒会シリーズ」を続けていたため、中学校現場ではすでに受験シーズン真っ只中になっていました。
そこで今回は、受験に関する未来予測を書いた学年通信「◯◯◯中学校3学年だよりミニ No.163」(2019年2月22日発行)を紹介します。
未来予測
佐賀県で中学校の先生をしている知り合いから
偏差値65あたりの高校の1つが募集人員を下回った。
一方で工業高校の倍率が上がっている。
という話を聞きました。
何で佐賀県?
福岡の話じゃないの??
と思った方もいるかもしれません。
授業の時に話したりもしていますが、私はあまり倍率を気にしていません。
もしも高校受験が「くじびき」だったら大いに気にしなければなりませんが、入試は「全数調査(わかるかな~、3年の数学で習いましたよ 笑)」なので、倍率よりも順位が大事なのです。
以前だったら
倍率を気にするんなら、CK高校(第5学区で一番難しい高校)を受けりぃよ
と言ってました。
偏差値67くらいの学校は、やはり倍率も低かったからです。
佐賀ではそういう言い方が通用しなくなりました。
でも、冒頭の佐賀の入試状況は、そんな「倍率」の話だけで終わらないのです。
親なら知っておきたい学歴の経済学
佐賀の先生と私のつながりは、ともに新潟県の上越教育大学の西川純先生に「アクティブ・ラーニング」の授業づくりについて教えを請うているという関係です。
で、その西川先生が2年前に書いた「親なら知っておきたい学歴の経済学」という本に次のように書いています。
時代は変わったのです。
「なんで大学進学みたいなものに手を出すんだ。もっと地道にやれることがあるだろう」とそう考えるべき時代になったのです。
中途半端な大学に行くぐらいだったら、職業高校で手に職をつければよいのです。
高卒で就職し、大卒の人より安定した生活を得ている人は少なくありません。
(略)
学歴はもはや高収入を保証しません。
「中卒より高卒、高卒より大卒。同じ高校、大学だったら偏差値が高い方が就職をより確かにする」というような学歴モデルは既に破綻しています。
(略)
昔は、会社が苦しい時にリストラがありました。
いまは、会社の景気がいい時でもリストラがあります。
終身雇用が、事実上崩れてしまったことは前にも書きました。
人工知能がすぐに人の仕事を奪うとは、私も思っていません。
しかし、それがやって来ることは避けられないと思っています。
その時期はいつでしょうか?
おそらくお子さんが中高年か、それにさしかかる時期だと思います。
もしかするとそれよりもかなり早くなるかもしれません。
※リストラ…仕事を辞めさせられること
※終身雇用…定年まで雇うことを前提とした雇い方
「親なら知っておきたい学歴の経済学」(西川 純著、学陽書房刊)より引用
私は、2年前にこの本を読んだ時
そんなこと、起こるのかなぁ
と思っていましたが、ついに佐賀では動き出したみたいです。
私が過ごしてきた時間よりももっと速いスピードで、社会が変わっていってる気がします。
電話が家に無かった、商店は夕方で閉まっていた
私が小学校3年生の時、家に電話がつきました。
今でもその日のことを覚えています(^^)
今度からお母さんの仕事場に連絡するとき、お店の公衆電話まで自転車で行かなくていいんだ(^^)
私が高校生の時、通学途中の駅の近所にセブンイレブンができました。
友だちと
あの店、夜の11時まで開いとるげなよ(開いてるんだって)。
便利やねぇ。
でも、買い物に行く人、おるとかいな(いるのかな)?
と話していました。
今から思うと笑い話ですが、当時は真面目にそう思っていました。
同様に社会は激変する
同様に、あなたたちが大人になって今をふり返った時、社会が激変している可能性が高いのです。
もしかしたらお父さんやお母さんになったあなたが子どもに
お母さんの時は、学校で英語の授業があっていたのよ。
と話すかもしれません。
AIの発展で、スマホに翻訳機が付く日は、そう遠くない将来らしいです。
お父さんの時は、2月とか3月に受験ってのがあってたんだぞ。
と話すかもしれません。
事実、文科省はセンター試験を廃止して、高校に在学している3年間で「大学入学希望者学力評価テスト」というの受けさせ、それを大学入試に反映させようとしているそうです。
2020年激変する大学受験
西川先生は「2020年激変する大学受験」という別の本(読み手は保護者対象の本です)のあとがきで次のように書いています。
今後の社会は、あなたの子どもがどんなに優秀であったとしても、ぎりぎりの状態に陥る可能性は常にあります。
そして、あなたがこの世にいない頃の遠い将来にそのようなことが起きるかもしれません。
そのときにあなたの子どもを助けてくれるのは、友だちや仲間なのです。
そして、友だちや仲間と一緒に困難を乗り越えることを経験し、「困ったときには助けを求めていい」「困った仲間は絶対助けよう」ということを身体で理解していく体験が、どんな逆境でも乗り越え、豊かに生きていける力につながっていきます。
それを子どもに体験させるのに一番いいのは学校なのです。
「2020年激変する大学受験」(西川 純著、学陽書房刊)より引用
私が「仲間を誰一人見捨てない」授業づくりをしている理由です。
おわりに
大学入学共通テスト
2021年1月、約30年間続いたセンター試験が廃止され、「大学入学共通テスト」に変わりました。
思考力や判断力、表現力をより重視した新しいテストが必要と国が考えたからです。
- 国語と数学に記述式問題
- 英語の民間試験利用
という大きな変更点は、「公平性を保てるか」「経済的負担」「地域格差」等の課題に対する準備不足で、導入は先送りされました。
しかし
先行きが予想しづらいこれからの社会では、知識の量だけでなく、自ら問題を発見し、答えや新しい価値を生み出す力が重要になる。
という、国による「ごく近い将来に対する見通し」は、何ら変わっていません。
それゆえ、今までのような
- 知識偏重
- 暗記重視
ではなく、
- 「思考力・判断力」
- 「読む」「聴く」に加え、「話す」「書く」語学力
を重視したのが「大学入学共通テスト」なのです。
人生に困ったとき、助けてくれるのは
もへちゃんが30代の頃勤めていた学校の校長先生は、学校の先生になる前、YM証券という超一流企業に勤めていた経歴を持つ方でした。
けれど、どうしても先生になりたくって、転職したんだ。
と話してくれました。
なぜこんな会話になったかというと、
YM証券が倒産しました。
というニュースが流れたからです。
あのまま勤めとったら、この歳で「無職」よ。
ゾーっとするね。
なんて話されてました。
もへちゃんが、西川純さんの著書の中にある
- 終身雇用が事実上崩れてしまった
- どんなに優秀であったとしても、ぎりぎりの状態に陥る可能性は常にある
をすんなり受け入れることができたのは、あの時の校長先生が、しみじみと語っていたからです。
さて、その西川純さんは、
あなたが一流企業に勤めていて、会社が倒産した時、誰に相談すればいいと思いますか?
同じ企業に勤めていた仲間?
それは無理です。
だってその人だって無職になっているのですから。
同じような能力の人が集まって、会社を回していたけれど、会社自体がなくなる世の中が来たら、同じ能力の人どうしでは助け合えなくなります。
そんな時、頼りになるのが、異なる能力の集まりであり、長い時間を損得関係なく過ごした経験を持つ小中学校時代の友人なのです。
上越教育大学 教職大学院 西川純教授提唱の『学び合い』の考え方
と、講演会で語られていました。
人生に困ったとき、助けてくれるつながり… もへちゃんが先生時代、『学び合い』の考え方の授業をしていた理由です。
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