2021/06/29
はじめに

前回のブログの「おわりに」で、差別発言と真っ向から闘った生徒会役員のことを書きました。

確か、彼らのことを詳しく通信に書いたはず…
探してみると…

ありました(^^)
そこで今回は、差別発言と真っ向から闘った生徒会について書いた通信「◯◯◯中学校3学年だよりミニ No.81」(2018年9月20日発行)について紹介します。
ある生徒会の話
以前勤務した学校での話です。
生徒会役員選挙が終わり、新生徒会の役員たちは生徒総会で提案する新しい生徒会スローガンについて熱く話し合いました。
そしてできた新しいスローガンは
信友~本音でつながる絆~
これには、

お互いが本当の気持ちをぶつけあうことができるような信頼関係で結ばれた学校にしたい

1人ぼっちでいる人をなくしたい
という気持ちが込められていました。
生徒会役員の人たちは、スローガンを達成するための新しい総会議案書作成に向け、希望に燃えていました。
そんな時、差別発言が
そんな時、しょうがい者を差別する発言がありました。
今朝同様、その学校でも先生からの話がありました。
私は、新生徒会役員の人たちに

この先、ずっと人を差別する発言があったら、こうやって先生が話をしていくのだろうか?

生徒会スローガンを全校生徒に提案する前に、

私たち生徒自らが、人を差別するような発言をやめようと思えるようにするためには?
という問題点がまだある。
ってことを伝えました。
彼らは考えに考えた末、まもなく実施する生徒総会の場で、生徒会役員から全校生徒に話すことを決意しました。
生徒総会当日の話

生徒総会当日、生徒会長は生徒会スローガンの説明をした後、こう切り出しました。

みなさん、今から話すことに対して、真剣に聞いて、真剣に考えて下さい。
先日、この○○中学校で「しょうがい」を持っている人を差別する発言がありました。
この言葉は、私たちが掲げたスローガン『信友~本音でつながる絆~』とは正反対の言葉で、この問題をほったらかしにしたまま、このスローガンを掲げても何の意味もないと私たちは考えました。
だから、議案審議に入る前に、この言葉について話したいと思います。
この後、
- この言葉が実際に生徒の間でどのように使われているか
- その差別性
を伝えました。
さらにこの言葉を学校からなくしていくように自分の普段の言葉で訴えました。
力強く訴える生徒会長の次に、3人の役員がそれぞれ自分の経験から考えたことを伝えました。
最初の人は、

- 小学生の時に、友人に対しこの言葉を発してしまったこと
- 今この言葉の重さを知り、謝りたいけど、相手は転校してしまい、とても後悔していること
を語りました。
2人目は

軽々しく意味も考えず使っていたけど、生徒会役員の1人としてとても情けなく思っています。
と語りました。
そして最後の1人はこう語りました。

僕は中学生になって学校の授業でこの言葉について詳しく知って、言葉の重みを知りました。
この言葉は、言った人や言われた人とは関係のない人まで傷つける言葉です。
この言葉が使われるということは、今の◯中にそれを許す雰囲気があるということです。
僕も今までにこの言葉を使ったことがあります。
でも、使ったことがあるからこそ、みなさんに伝えたいことがあります。
僕はこの言葉の意味を知って、絶対にこの言葉は使いません。
僕は正しく知ることで変われたと思います。
だから、この言葉を使ったことがある人達もきっと変われます。
僕たちが憎むべきことは使った人でなく、差別です。
みんなで差別をこの◯中からなくしていきましょう。
3人の話の後、生徒会長が全生徒にこう呼びかけました。

この3人は、今、変わったんです。
このことをみんなの前で話してくれてうれしいです。
差別は人間がつくったものだから、私たちの手でなくしていけるんです。
みなさんは今までの話を聞いて、この言葉に対してどう思いましたか。
その思いを発表できる人はどうか発表してください。
生徒会役員の人たちも私も、

誰か手を挙げてくれるだろうか?

熱く語った4人に対して、応えてくれる人はいるだろうか?
と固唾をのんで待ちました。
※固唾…緊張して息を凝らしている時などに、口の中にたまる固まった唾のこと。事の成り行きを案じ、じっと見つめたりしている時、この固唾を飲み込むことから、そのような様子を表すようになった
静かに聞き入っていた生徒の1人が手を挙げました。

僕は小学校の時からずっと人権学習を受けてきたけど、真剣に差別のこととか考えていませんでした。
でも、今はみんなで差別をなくしたいと思います。
続けて、1人また1人と手が上がりはじめました。
もう感動です!
生徒会役員の人たちの顔も晴れ晴れとしていました。
そして、その人たちも自分の感じたことを話してくれました。
すると、この時問題になった「しょうがい」のある人を差別する言葉を言ったAさん当人が手をあげました。

私は今までこの言葉を聞いても、聞き流していました。
でも、それは間違っていると気付きました。
これからはそんなことは言えない雰囲気をつくっていきたいです。
Aさんの発言も、全生徒が静かに聞きました。
この代の生徒会役員は、次の年、新入生が、やはり「しょうがい」を持っている人に対する差別発言をした時に、学年集会で話して強く訴えました。
1年生、2年生は、そんな3年生を

正しいことを堂々と自信を持って話し、そして行動しているかっこいい先輩たち
と感じました。
そして今
私は、◯中の3年生のあなたたちだったら、同じようにとりくめたに違いないと思っています。
いや、まだ卒業していないのだから、今でも下級生にその背中で語れます!
下級生や同級生が、人を差別するような言葉を使っている場面に出会ったとき、

それっておかしくないか。
俺はその言葉の意味を知ってから、絶対に使わんって決めたぞ。
お前は意味を知ってて、それでも使いよるとか?
それとも意味を知らんのか。
知らんなら教えてやるぜ。
ってね。
おわりに

希望に満ちた生徒会役員に冷や水を浴びせる
素敵な生徒会役員たちでしょ?
重要なのは、この子たちは、先生に言われたから、言われたとおりのことを集会で語ったのではなく、自ら考え行動したってことです。
あのとき、生徒会役員たちは希望に満ちて、新スローガンをどうみんなに伝えるかを考えていました。
そんなときにもへちゃんは、

このまま新スローガンを提案しても、「絵に描いた餅」になる。
なぜなら、人と人との関係を切る言葉(差別発言)が何度もあってるし、それを聞いた周りの人も知らぬふりをしているから(>_<)
と冷や水を浴びせるような話をしました。
でも彼らは、もへちゃんの投げたボールを見事に打ち返しました(^^)
もへちゃんはきっかけをつくりましたが、どんなことを生徒総会で話すかについては、ほとんど生徒会役員たちで考えました。
さらに、子どもたちは、自分たちの考えが独りよがりではないか、たくさんの先生からアドバイスももらっていました。
そして生徒総会。
全校生徒がどんな反応をするのか、役員たちももへちゃんも経験ありません。
まさにシナリオなんてない生徒総会のやりとりでした。
だからこそ生徒会役員も、もへちゃんも、そして他の先生方も固唾を呑みました。
そして、とてもとても素敵な時間を、学校にいる全員で共有できました。
コマーシャル
もへちゃんは、この生徒会役員のとりくみを、
「授業を拓く」シリーズNo.47
こんな中学校があることを誇りに思います
~セルフイメージ高揚と学力保障~
(福岡県教育総合研究所刊)
というブックレットでまとめたことがあります。
だから記憶が薄れず、詳しく通信に書くことができたわけです。
このブックレットには
- 『学び合い』の考え方で作る授業
- 反戦平和劇
- 生徒会活動
について書きました。
電子書籍化されてませんが、福岡県教育総合研究所のホームページから購入できます。
1冊300円とのことですので、興味ある方はぜひどうぞm(_ _)m
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