2020.04.17
はじめに
緊急事態宣言の対象が全国に拡大しました。
ウイルスとの闘いに打ち勝つのは、いつになるのでしょうか?
5月6日以降、学校再開できるのかなぁ…
何度かこのブログで紹介した朗読劇「クイズメーデー スター・ウォーズ編」は、お披露目の機会が無くなりました。
2020年のメーデーも中止になったからです。
「臨時休校の長い休みを『精神と時の部屋』みたいにしちゃおう」シリーズ」第34弾では、「クイズメーデー スター・ウォーズ編」のシナリオを書くにあたって入手した絵本について書きたいと思います。
プチ・精神と時の部屋 No.34「トミーが3歳になった日」
2020年のメーデーで、青年部の人たちに演じてもらう予定だった「クイズメーデー スター・ウォーズ編」
そのシナリオを書いていて、スター・ウォーズの悪役である帝国軍やその後継のファーストオーダー軍が、ナチス・ドイツに酷似していることに気づきました。
そこで改めてナチス・ドイツのしたことを調べました。
「アンネの日記」については以前、ここで紹介しました ↓
絵本「トミーが3歳になった日」
同様に、以前から気になっていた「トミーが3歳になった日」という絵本もこの際、買っちゃおうということで購入しました。
3歳の誕生日が特別なわけ
3歳のお誕生日は、ひとつおおきくなるということがどんなことか、生まれてはじめて、はっきりわかるときです。
(中略)
トミー・フリッタが3歳になった日は、暗やみでした。
世界中が、やみのなかでした。
トミーのまわりには、わらい声をあげるおとなや子どもは、もう、ひとりもいませんでした。
私がこの本の題名を知って、読んでみたいなぁと思ったのは、わが子が小さい頃でした。
確かに「3歳の誕生日」というのは、その日何をしているのか、子どもがわかる最初の年齢だろうなぁと感じたからです。
3歳の誕生日に、トミーが目をさましたのは、ベッドとよべるようなベッドの上ではありませんでした。
住んでいる建物も、家ではありませんでした。
3本ろうそくの立ったケーキ、それも、紙の上にかかれたものにすぎませんでした。
夜、まどというまどを黒い紙でおおい、ささやかなランプのともしびをたよりに、お父さんのベジュリフ・フリッタがかいたケーキでした。
その絵を、トミーは見せてもらったことさえありません。
壁のうしろのひみつの場所に、お父さんが、ほかの絵といっしょに、そっとかくしてありましたから。
たった1まいの絵でも、もしみつかると、たいへんなことになってしまうのでした。
テレジン強制収容所
もうおわかりでしょうか?
朗読劇「クイズ メーデー スター・ウォーズ編」の資料として購入したこの本は、ナチス・ドイツが作ったテレジンというユダヤ人の強制収容所の中のことを描いた絵本です。
お父さんが、その目で見たことすべてが、紙の上にかかれています。
食べ物のおけの前に行列する、飢えた人々のむれ、ぎゅうぎゅうづめの列車、毎日毎日ふえていく病人、死人。
どれひとつとっても、ドイツ人が、ひみつにしておきたいものばかりです。
けっして、口にだしてはならないものばかりです。
(中略)
すててしまおうか。
もしてしまおうか…いやいや、すててはいけない、もしてはならない。
たとえ、もしも、ここテレジンの人たちが、だれひとりとして生きのびられなかったとしても、壁の外の人たちに、ここでおきたことを、なんとしても知ってもらわなければなせない。
おぼえておいてもらわなければ、ならないのだ。
こんなことが、けっして、2度とふたたびおこらないように。
ナチス・ドイツという国家による大量虐殺「ホロコースト」
犠牲となったユダヤ人は少なく見積もっても600万人を超えます。
テレジンは、悪名高き絶滅収容所アウシュビッツ=ビルケナウ収容所への中継点として作られた強制収容所です。
元々、テレジンは6000人ほどが住んでいた町でした。
その町をナチス・ドイツ軍が占領し、そこに10万人のユダヤ人をつめこみ、町ごと収容所にしました。
絵をかきながら、外で軍靴の音がしまいかと、お父さんは、耳をそばだてます。
しらずしらず、手は、絵をおおいかくします。
けっして見つかってはなりません。
ドイツは戦争にまけるだろうといううわさが、ささやかれるようになった今となっては、なおさらのことです。
戦争は、もうながくつづくはずはありません。
毎日毎日、姿が見えなくなるおとなや子どもたちは、ますますふえるばかりです。
テレジンでは、毎日毎日人がいなくなる…そのわけは?
なぜ、姿が見えなくなる人が多いのか、わかりますか?
食べ物が、十分になく、ふけつで寒さがきびしいと、バラックのとびらやまどから、洗面所や、よごれた便所から、病原菌がしのびこんできます。
そして、わらや着ものにすくっている動物や、小さい生きものが、人から人へ、子どもから子どもへと、ばい菌を運ぶのです。
病気のときにのむ薬など、そこにはありません。
そして、あの列車です。
列車の数は、ふえるばかりです。
男の人たち、女の人たち、そして、子どもたちが、ぎゅうぎゅう貨車におしこまれます。
はなればなれになるのをいやがる人、泣きさけぶ人、すっかり年老いてころぶ人、そんな人たちは、みんな、ようしゃなくぶたれます。
したがうほかはありません。
とびらがしまります。
列車が走りだします。
するとまた、列車がやってきます。
よその国々から、人々をぎっしりつめこんで。
ときには、子どもたちばかりをつめこんだ列車もありましたが、みんな、ここテレジンのどの子どもより、もっと元気がなく、もっとやせこけていました。
子どもたちは、あけはなたれた貨車のとびらごしに、外をながめています。
あおじろい顔に見ひらかれた、何千というおびえた目。
その目が、みもしらぬ町を、じっと見つめます。
だれが、ぼくたちをここへ連れてきたの?
だれが、またおうちに連れてかえってくれるの?
目という目が、そうたずねています。
アウシュビッツ=ビルケナウ絶滅収容所
以前、このブログで「アンネの日記」について書いた時、アウシュビッツへの貨車のことを書きました。
上の引用文に書かれているのは、まさにその貨車です。
アウシュビッツ=ビルケナウ収容所に到着すると、労働できる者とできない者を選別し、できない者はガス室送りでした。
だから、貨車で送られた子どもたちのほとんどはガス室で殺されました。
「ほとんど」と書いたのは例外があったからです。
例えば、双子はガス室送りにはなりませんでした。
なぜかというと、人体実験の材料にしたからです。
ガス室では死にませんでしたが、生きながら凍らされたり、身体を切断されたり…むごい死に方をした子がほとんどです。
トミー一家のその後
「これは、わたしがおまえのために、やまほどかこうと思ってる本の、第1さつめです」
ベジュリフ・フリッタは、トミーのためにかいたスケッチブックの、最後のページに、そうかいています。
(中略)
トミーが3歳になった夏、ドイツ兵たちが、お父さんと、となりに住んでたおじさんが絵をかいててるのを、とうとう見つけてしまいました。
男の人たちふたり、ふたりの奥さんたち、そして、おさない男の子(トミー)も、ちいさいほうのとりで(ゲシュタポ=秘密警察の監獄であるテレジンの小要塞)にとじこめられてしまいました。
それからまもなく、囚人用の列車がやってきて、ふたりの男の人たちを、連れさってしまいました。
「帰還無用」…囚人の名ぼにのったふたりの名前の下に、ドイツ兵は、そうかきこみました。
トミーのお父さんが連れて行かれたのは、アウシュビッツ=ビルケナウ収容所です。
移送の8日後に亡くなりました。
トミーのお母さんも、小要塞の独房の中でまもなく亡くなりました。
トミーが4歳になったとき、お父さんもお母さんも、もう、この世にいませんでした。
テレジンの、いちばんおさない囚人として、戦争がおわるまで、トミーは、鉄格子のおくのあなぐらに、とじこめられたままでした。
戦争が終わって
戦争が終わって、トミーたちは解放されました。
赤十字のおおきい車が、トミーを、プラハの町へ連れていってくれました。
細い細い脚で、水頭症にふくれあがったおおきな頭をささえた、おさない男の子。
壁のむこうがわからもどってきた、かずすくない子どものひとりでした。
(中略)
トミーはりっぱに成長し、今では4人の子どものお父さんです。
けれども、壁の内がわで見たことを、けっしてわすれることはありません。
(中略)
けっして、わすれてはならないのです。
お父さんが、命をかけてトミーのために残した絵が、そういっています。
戦争がおわったあとで、ドイツ兵に、ついに気づかれなかったひみつのかくし場所から、とりだされたその絵が、そういっているのです。
おわりに
シナリオを書いてる途中に、昔、新聞の書評に載っていた「トミーが3歳になった日」のことを、ふと思い出し、是が非でも読みたくなりました。
しかし図書館は、新型コロナウイルスの影響で、すでに閉館中。
メルカリで購入したのですが、思ったより到着が遅れ、シナリオ作成の期限には間に合いませんでした。
シナリオを書いた後でしたが、気になる1冊だったので、じっくり読みました。
絵本なのに「じっくり」って?
そう思われるかもしれません。
絵本ですが、活字がかなり多く、じっくり読み込めました。
ですので、小さい子には難しい絵本です。
読んでみて、ナチス・ドイツのしたことをいろいろ思い出しました。
知らない人は、どう思うのかなぁ。
この絵本だけで、しっかりした劇のシナリオが書けそうだなぁとも感じました。
でも、
- まずスター・ウォーズのことから入り、
- だんだんとナチス・ドイツのことを語り、
- 今の日本に潜んでいる危機を指摘する
そんな流れの朗読劇「クイズ メーデー スター・ウォーズ編」の方が、小さい子から大人まで楽しめると自画自賛して、今回のブログを終了します(^^)
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