2021/08/26
はじめに
前々回のブログで、
ウルトラセブン第26話「超兵器R1号」(ギエロン星獣登場)を見せて「正義とは」って道徳をした
と書きました。
その日書いた通信もあったはずなのですが…まだ見つけられてません。
探していると、別の年にウルトラセブン第42話「ノンマルトの使者」を見せて「侵略とは」を考えさせた際の通信を見つけました。
あらすじ
現代の人類の登場以前に地球で栄えていたが、彼らの侵略によって海底に住処を追われた知的生命体。
性格は好戦的でないうえに戦闘能力もレーザー銃を持つだけで高くはなく、海底で平和に暮らしていたが、海底にまで人類の魔の手(開発)が伸びてきたことを悟り、海底開発中だったシーホース号を爆破する。
また、イギリスの原子力潜水艦グローリア号を奪取して地上を攻撃し、ガイロスを使って船舶を襲わせる。
「人間は侵略者」という主張と人類側の海洋開発とは相容れず、ガイロスはウルトラセブンに倒されたうえ、ウルトラ警備隊の反撃に遭ってグローリア号や海底都市も破壊された。
M78星雲では地球人を「ノンマルト」と呼ぶが、これが文字通り「ノンマルト」のことを指すのか、「現代の人類」のことを指すのかは劇中では謎のままだった。
「ノンマルト」Wikipediaより引用
そこで今回はその通信「学級記録 No.64~65」(1996年2月29日発行)を紹介します。
ノンマルトの使者
道徳の時間にした「侵略」をテーマにした1分間スピーチの内容です。
1班
爆破したウルトラ警備隊は、悪いと思う。
先住民のノンマルトがいるのに、自分たちのために全滅させたので、ノンマルトがかわいそうだ。
でも、ノンマルトはイギリスの原子力潜水艦を盗んだので、それは悪いと思う。
それと、ノンマルトのせいで恐竜が全滅したかもしれない。
ということは、みんな自分のことしか考えてないと思う。
だから、みんなで仲よく暮らすべきだ。
(この後もスピーチ文は続くのですが、1分間スピーチの時には省略してたので、紙面上でもそうします)
2班
はじめは、ノンマルトが侵略者だと思ったけど、実は先住民だった。
これはテレビだが、現実に似たようなことが起こってるかもしれない。
木が切られたり、工場が建ち並ぶ今、テレビで起こったことが現実で起こってもおかしくないのではないか。
3班
人間は自分勝手だ。
(スピーチはまだありましたが、文章はここまででした)
4班
最初、首だけこわかった。
侵略と戦略は違うと思う。
人間は確かに勝手な生き物だ。
適当に好きなことやって、他のことなんて考えない。
自分たちの考えで、自然も壊してるし、戦争だって起こしている。
人間は、今迄のことを考え直した方がいいのではないだろうか。
(この後もスピーチ文は続くのですが、1分間スピーチの時には省略していたので、ここでもそうします)
5班
ノンマルトは、最初、地球に住んどったのに、人間が侵略したかもしれない。
ノンマルトは、人間にかなわないので海底で静かに暮らしていたのに、人間達が海底まで侵略しようとしたから、ノンマルトが怒った。
6班
人間の侵略は恐ろしい。
なんで子どもはみんな、ほくろが付いていたんだろう?
ほくろで探したんだろうか?
真市は幽霊だった。
あの海岸は呪われている、お参りをしなくては。
ノンマルトは顔がグチャグチャだった。
あの大きい怪獣は、少しバルタン星人に似ていた。
ノンマルトは悪くないと思う。
家を破壊されて、かわいそうだった。
ウルトラセブンは、実は悪いやつじゃないか…どっちが悪いか、わからない。
先生
侵略する側は、いつも残酷である。
テレビの中の「隊長」に代表される人間は、自分たちの都合で資源を海に求め、そこにひっそり住んでいたノンマルトを全滅させた。
あの海底都市には、子どもも住んでいただろう。
母親も住んでいただろうに…
テレビの世界だけではない。
人間は、いたる所で侵略を行ってきた。
- アメリカ開拓の際、アメリカ原住民(インディアン)を虐殺して土地を奪ったり
- ヒトラーは「ナチス・ドイツのため」という名目で、何百万人のユダヤ人の虐殺を行った
- 我々日本人も、中国・朝鮮・韓国を侵略した際「焼き尽くし、奪い尽くし、殺し尽くす」という三光作戦を実施し、女・子ども関係なく虐殺した。妊娠した女性を殺し、お腹の中の胎児を銃剣で突き刺し、頭上に掲げて勝ち誇ったと言う
この「ノンマルトの使者」の台本を書いた人は、沖縄出身の人である。
このころの沖縄は、日本ではなくアメリカだった。
戦争以降、沖縄はアメリカに占領されていたからだ。
アメリカの侵略に対する抗議の意味を含んでいるのかもしれないが、沖縄だけに戦争の後始末を押しつけている日本という国に対し、言いたいことがあったんじゃないだろうか?
このことを放置し続けて、50年。
やっと国は考え始めた。
「侵略」について、1分間スピーチをした。
ビデオは、海底人ノンマルトに対し、侵略をはじめた人間の物語。
海底都市を破壊して
やった!
ついにやったぞ!!
これで海底は、我々人間のものだ!!!
と興奮しながら笑いを浮かべる隊長の姿が、以前見た写真を思い出させた。
中国で、日本軍が大虐殺した時の記念写真
片手に日本刀、もう一方の手に中国人であろう首(切れていた)を持ち、笑顔で映っている軍人。
みんなのスピーチに対し、先生はいい評価をしなかった。
中学もあと1年で終わり。
早い人は、1年後には社会に出るのだ。
それならば、1つのテーマに対し、その感想だけで終わらず、過去のいろいろな出来事や経験したことを語れるようになって欲しい。
そのためには、いろんなことを知らねばならない。
もちろん、君たちのスピーチの中には、先生が考えられないような素晴らしい言葉がある。
- 2班が環境問題に結びつけていったこと
- 6班の「どっちが悪いのかわからない」という言葉
など。
知識(知ること)をもっと増やしていくと、これらの言葉はもっと輝き出すんだ。
おわりに
通信内に
アメリカの侵略に対する抗議の意味を含んでいるのかもしれないが、沖縄だけに戦争の後始末を押しつけている日本という国に対し、言いたいことがあったんじゃないだろうか?
このことを放置し続けて、50年。
やっと国は考え始めた。
と書きました。
放置し続けて50年
「放置し続けて50年」については、以前何度かブログに書いてきました。
- 6.23沖縄慰霊の日 平和の詩(付録00年~20年の平和の詩)
- 沖縄戦を知らない子どもや保護者に…島唄に込められた想い
- 沖縄戦の理解を深めるために…ひめゆり学徒隊・宮城 喜久子さんの証言から
- 76年目の6.23沖縄慰霊の日に思う「戦争のできる国 日本」化
また、反戦平和朗読劇「島唄」を電子書籍化しています。
「やっと国は考え始めた」
この通信を書いた前の年(1995年)の9月に、12歳の少女が沖縄に駐留する米国海兵隊員3人に拉致され、暴行を受けるというとてもひどい事件が起きました。
日米地位協定(2021年の今でもこの地位協定はあり続けています)によって米軍人が犯罪を犯しても、基地外で現行犯逮捕しない限り日本側は逮捕できません。
この事件でも、米軍は犯人の引き渡しを拒否しました。
沖縄県民の積もり積もった怒りが爆発し、10月に開かれた総決起集会で8万5000人が集まり、抗議の声を上げました。
そして翌年の1996年、米軍は普天間飛行場を「5~7年以内に全面返還」すると発表しました。
そのことを「やっと国は考え始めた」と表現したのです。
ただし、あれから25年、未だ普天間飛行場は返還されていません。
それどころか、国は、普天間飛行場を返す代わりに、辺野古に米軍基地を作ってあげています。
地元、沖縄の反対の声に一切耳を貸さずに…
沖縄を捨て石にする思想は、戦中のみならず、戦後、そして今でも脈々と続いています。
ウルトラセブン4Kリマスター版
BS NHKでの、ウルトラセブン4Kリマスター版による再放送は、22話「人間牧場」(2021/08/22放送)までが放送されました。
今回、紹介した「ノンマルトの使者」は42話なので、もうしばらくかかりそうです。
一方、前々回紹介した「超兵器R1号」(26話)は、間もなく(2021/9/19 日)放送です。
録画しようっと!
あっ、もう先生、辞めてたんだった(^^;)
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