2021/05/24
はじめに

もへちゃんは、以前、「狭山現地調査」に参加したことがあります。
狭山現地調査…以前は、労働組合や宗教関係者でとりくんでましたので、もへちゃんより上の世代の方ならご存じかもしれません。
狭山事件の犯人として逮捕された石川一雄さんの無実を実体験するのが「狭山現地調査」です。
狭山事件とは
狭山事件(さやまじけん)は、1963年(昭和38年)5月1日に埼玉県狭山市で発生した、高校1年生の少女を被害者とする強盗強姦殺人事件。
1963年(昭和38年)5月23日、当時24歳の石川一雄が逮捕され、同年6月13日、窃盗・森林窃盗・傷害・暴行・横領の罪で起訴された。
Wikipediaより引用
1963年3月31日、4歳の吉展ちゃんが誘拐され、警察は身代金を奪われ犯人を取り逃がしてしまいました。
それから1ヶ月後に起こった狭山事件でも、身代金を受け取りに来た犯人をみすみす取り逃がしてしまい、5月4日には女子高生は死体で発見されました。
各新聞は警察の失態を非難し、警察は世論の厳しい批判を受け、「何としても生きた犯人をつかまえる」と記者会見で国家公安委員長が述べるなど、追い込まれていました。
一方、地域住民の被差別部落に対する根強い差別意識を反映して、事件発生直後から、市内の被差別部落民を犯人視する声が広がっていました。
そこで警察は、5月23日、被差別部落の青年を逮捕し、
「認めれば10年で出られるようにしてやる。認めなければ兄を逮捕する」
と自白を強要しました。
それが石川一雄さんです。
兄が犯人であるかのように誘導されていた石川さんは、その言葉を信じ、「自白」しました。
1審で死刑判決が出ても石川さんは「認めれば10年で出してやる」という取り調べをした刑事の言葉を信じていました。
その後、拘置所仲間から「認めれば10年で出してやる」という言葉がうそであり、このままでは死刑になることを知らされた石川さんは、第2審で初めて「無実」を主張しました。
節目の日
5月23日は、石川一雄さんが別件逮捕された日です。
「第2、第3の石川さんを出さないため」に、教師自らの教育実践をふりかえるべき日なので、人権「同和」教育にとっては「節目の日」と言えるのですが…
「第2、第3の石川さんを出さない」ってどういうことなのでしょう?
そこで今回は「狭山の教育課題」について書いた「◯◯◯中学校 研究推進委員会だよりNo.4」を紹介します。
狭山の教育課題
狭山事件とは
1963年5月1日、埼玉県狭山市で女子高校生が行方不明になり、脅迫状がとどけられるという事件がおきました。
警察は身代金を取りにあらわれた犯人を40人もの警官が張り込みながら取り逃がしてしまいました。
女子高校生は遺体となって発見され、警察の大失敗に世論の非難が集中しました。
捜査にいきづまった警察は、付近の被差別部落に見込み捜査を集中し、なんら証拠もないまま石川一雄さん(当時24歳)を5月23日、別件逮捕し、1カ月にわたり警察の留置場で取り調べ、ウソの自白をさせて、犯人にでっちあげたのです。
地域の住民の「あんなことをするのは部落民にちがいない」という差別意識やマスコミの差別報道のなかで冤罪が生み出されてしまったのです。
狭山現調とは
もう10年以上前ですが、僕も狭山現地調査(現調・げんちょう)に行ったことがあります。
現調とは、石川さんが自白した「現場」に実際訪れ、その犯罪を見極めることです。
刑事ものでよく言われる「現場100回」がそれにあたりますし、裁判官や検事、弁護士等、人を裁く人たちにとっても大切にしているとりくみです。
10年以上前の僕が、そしてこの3月に行った解放子ども会の子たちが、狭山現調で感じたことは、

石川さんの当時の自白の通りだと、矛盾することがたくさんある
ということです。
なぜ石川さんは「自白」したのか?
生まれて初めて接する刑事たちに連日責められ、「やっと保釈」と思った6月1日に再逮捕。
その後約1ヶ月におよぶ不当な取り調べが続き、身も心も疲れ切ったところで

おまえでなければ兄をつかまえる。

殺しを認めれば10年で出してやる。
男と男の約束だ。
さらに、顔見知りの巡査から

長谷部警視の言うことを聞いていればまちがいない。
そのようなアメとムチのやり方が密室で繰り返され、「虚偽の自白」をでっちあげられていったのです。
恐ろしいことにその自白にあわせて、それまでに見つからなかった証拠の万年筆が見つかったりもしました。
石川さんは長谷部警視との「10年で出してやる」という約束を信じ、翌年の3月11日の地裁の死刑判決を平然と聞き流してしまいました。
狭山の教育課題
10年以上前に行った狭山現調の際、仮出獄している石川さんに会って話を聞きました。
当時連れて行った解放子ども会の子たちに

勉強しなさい。
と強く、真剣に話されました。
石川さんは部落差別の結果、あまり学校に行っていません。
当時の先生たちは

私のことなどほったらかしにした。
のだそうです。
たまに行っても勉強はわからず、先生は

学校にこないから

意欲がないから
とほったらかしでした。
背景に生活の重みや厳しさがあり、それこそが部落差別の結果だったのに…。
その結果、石川さんは弁護士が自分を守る人ということさえも知らず、虚偽の自白をでっちあげられてしまいました。
第2、第3の石川さんを出さない教育が営まれているか
それが狭山の教育課題です。
- 「子どものせい」「家庭のせい」で終わらせず、
- 子どもの現実から出発し、
- 家庭訪問で親とつながり、
- 暮らしをたてるだけの学力を、ムラの子をはじめとするすべての子どもたちに保障
していきましょう。
狭山現地調査報告会
5月8日におこなわれた支部集会で、今年3月に◯中及び◯小を卒業した解放子ども会の子たちが卒業旅行で行った、狭山現地調査の報告会を行いました。
自ら現地を歩き、強要された自供と事実の食い違いや、証拠ねつ造までした警察への怒り、裁判の差別性をこれまで以上に感じた子どもたちは、石川さんの想いに何とか応えようと

自分たちにできることを考えてやっていきたい。
いや、やります。
そのために力を貸して欲しい。
と力強く訴えました。
おわりに

もへちゃん自身、狭山現地調査に参加して感じたことは

自白のとおりだと、矛盾がいっぱいありすぎる!
ってことでした。
真実であれば、すべての物事がジグソーパズルのように1つひとつがピッタリとはまっていくものです。
しかし、
- 石川さんの「自白」どおりに歩いたとされる道を歩いてみると、時間が全然あいませんでした
- 「自白」のとおりに死体を200m運搬しようとしたら、もへちゃんの筋力ではとても無理でした。たぶん筋トレをしているような人じゃないと運べません
- 「自白」のとおりに死体をイモ穴に隠すとして、イモ穴にも死体にも痕跡を残さないなんて考えられません
- 2度の家宅捜索で見つからなかった万年筆が、石川さんが「自白」した後に、かなり低めの鴨居から見つかったなんて信じられません。
- …
矛盾がどんどん出てきました。
しかし、石川さんを有罪とした検察にとっての「それら不利な証拠」は、再審請求の場に未だ提出されていません。
そして、それを持っているのは検察なのです。
司法の「正義」
- ドラマ「HERO」で木村拓哉さん演じるような久利生検事や、
- ドラマ「99.9-刑事専門弁護士」で松本潤さん演じる深山弁護士や
- ドラマ「イチケイのカラス」で竹野内豊さん演じるような入間裁判官
みたいな人がいなければ、司法において「正義」は実行されないのでしょうか?
しかし、そんなドラマが人気あるってことは、国民は
- そんな検事、
- そんな弁護士、
- そんな裁判官
を望んでいるってことなのになぁ(>_<)
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